火炎と水流
―交流編―


#7 とけた誤解と淳の勇気


夜。火炎と水流、それに桃香の三人は泉野の両親にあいさつをすると揃って玄関を出た。
「へへ。泉野の人達ってみんないい奴だよな。夕飯までごちそうしてくれるなんてさ。おいら感激!」
「うん。でも、淳お兄ちゃんも来ればよかったのにね」
桃香が言った。彼は泉野の誘いを断って、先に帰ってしまったというのだ。
「そうだよ。こんなうめえ飯、滅多に食えねえもんな。やっぱお母さんってのがいると違うよな。何かこう、家の中もほわっとあったかい感じするし……」
水流はうれしそうだった。が、桃香は俯くと、ただ黙って自分の影を見つめた。

「水流!」
火炎が諭すように注意するが、水流には伝わらない。ぴょんと縁石に飛び乗ってはバランスをとりながら陽気に笑う。
「あーあ。おいらにもお母さんってのがいたらなあ。それに、お父さんってのもああして見るといいもんだよな。息子のことを信じますってきっぱり言えるなんてカッコいいじゃん。どっかの誰かさんとは大違いでさ」
水流はオーバーに言って笑った。

「水流、いい加減にしないか!」
火炎が制する。
「何だよ? 火炎、ひがんでんのか? バッカだなあ。おいら、おめえだっていい奴だと思ってんだぜ。何しろ、おいらのためにちゃんと水泳パンツだって買って来てくれたんだからさ」
そう言うと彼が持っていた袋を見てまた、にっと笑う。しかし、ずっと俯いたまま歩いていた桃香が、いきなり今来た道を戻るように駆け出した。
「桃香!」
火炎が呼んだ。が、振り向かない。ただ真っ直ぐに駆けて行く。

「何? どうしたんだよ? 急に……」
水流がきょとんとして訊いた。
「馬鹿が……! これを持ってとっとと帰れ!」
袋を投げつけて火炎は桃香のあとを追った。
「何すんだよ? 今、わざとぶつけたろう? おい! 待てよ、火炎!」
水流もあとを追おうと走りだした。が、思わずはっとして足が止まる。

――あんた達には両親もいないそうじゃないか

あの憎らしい店長の言葉を思い出したからだ。
「そういや、あんときも桃ちゃん少し寂しそうな顔してたっけ……」

――桃香にはお母さんがいないの。でも、火炎がいてくれるから平気

はじめて会った頃、そんなことを言っていた。

――火炎がいてくれるから平気

「平気じゃない……」
水流ははっとした。
「本当はちっとも平気じゃなかった。あの子は……。ずっとお母さんが欲しくて……。でも、ずっとがまんして、明るく笑って……平気だなんて笑って……」
電信柱の影が斜めに長い。
「ごめん……」
自分が何を言ってしまったのか、ようやく思い当って肩を落とした。


「お兄ちゃん!」
公園の入り口で淳を見かけた桃香が呼んだ。
「桃ちゃん……。どうしたんだ? こんな時間に……。おまえは泉野んちにいたんじゃないのか?」
驚いたように淳が訊いた。
「うん。行ったよ。それで、夕ご飯をみんなで食べたの」
桃香は言ったが、どこか寂しそうだ。
「楽しくなかったのか?」
「ううん。とても楽しかったよ。みんなとてもやさしくしてくれたし、お料理もおいしかったの」
「それじゃあ……」
どうして悲しそうな顔をするのかという言葉を呑みこんで、淳はじっと少女の顔を見つめた。その頬に反射する光……。立ち入り禁止の札と一緒に置かれた反射灯の光だ。その赤い点滅の隙間から涙が流れる。

「お母さんが欲しい……」
ぽつりと言った。
「火炎のことが好き。それに水流も……。だけど、やっぱり桃香、お母さんが欲しい! 学校から帰ったら、お帰りって言ってくれて、お母さんが作ってくれたごはんをみんなでおいしそうに食べるの。授業参観だって、みんなお母さんが来てくれたのに……桃香だけ……」
そんな彼女の話を黙って聞いていた淳がぼそりと言った。

「それじゃ、おれの妹になるってのも無理かな……。うちの親もいつも仕事が忙しくて、授業参観なんか来てくれないし、夕飯だって大抵一人で食べてる。それでも、真菜がいてくれた時はよかったんだけど、あいつがいなくなってからずっと一人ぼっちだから……」
「お兄ちゃんも寂しいの?」
「ああ。でも、おれはいいんだ。もう慣れたし……」
「いいの?」
淳がうなずく。それから、ふと思いついたように訊いた。

「おまえ、泉野のことは好きか?」
「うん。とってもやさしいよ」
「あいつは昔からそうさ。どんな時にもいい子で、みんながおれのこと嫌っても、あいつだけは心配してくれた。本当にいい奴だよ」
「仲良しなの?」
「うん……あいつとは幼稚園の時からずっといっしょだったから……」

「水流もいい子だよ。でも……ちょっとわからずやなの」
桃香が言った。
「わからずや?」
「うん。いい奴だけどわからずや。人間の気持ちなんかわからないんだ」
「人間?」
淳が怪訝な顔をする。
「うん。だって水流は妖……」
そう言い掛けて桃香ははっとして口を噤んだ。

「何……?」
「ううん。何でもない! 水流にはわからないってこと! 桃香の気持ちなんか……。泉野のお兄ちゃんとはちがうから……」

「桃ちゃん……」
月の影から見つめる瞳……。それを隠すように黒い雲が垂れこめて行く……。
――人間の気持ちなんかわからない!  だって水流は妖怪だから……
(桃香……。ならば、おれもそうなのか? 所詮は人間の気持ちなど理解できないと言うのか? 妖怪だから、理解できないと……)
火炎は、桜の太い幹の影にいた。風もないのに、頭上でざわざわと葉が音を立てて揺れている。


火炎が帰って来た。
「あれ? 桃ちゃんは?」
水流が訊いた。
「……村田といっしょだ」
「いっしょったって、もう夜だぜ。何で連れて帰らなかったんだよ?」
「うるさいっ!」
火炎は黙って台所へ行くと、小さなダイニングテーブルの椅子に座った。桃香には勉強机を買ってやった。水流には居間のこたつを机の代わりに使わせている。そして、火炎はここで自分のための勉強をしていた。読み掛けていたフロイトの本を手にすることもせず、ただじっと何かを考えていた。

「火炎……。さっきは悪かったって、おいら反省したんだ。だから……」
「……黙ってろ」
静かな口調だったが、他を寄せ付けない雰囲気を感じて水流は大人しく今に戻った。

それから数分もしないうちに玄関のドアが開いて、桃香が帰って来た。
「ただいま……」
「あ、お帰り! 桃ちゃん、さっきはごめんよ。おいら、気がつかなくって……」
「ううん。いいの。水流が悪い訳じゃないよ」
そう言うと彼女は居間にあった新しい水着や帽子、それにバスタオルを見た。
「これ、火炎が買ってくれたの? ありがとう! くまちゃんの絵の付いてるタオルに袋。桃香ね、これが欲しかったの」
「よかったね」

「火炎、怒ってる?」
桃香が近づいてその顔を覗く。
「いや、怒ってなんかいないよ。ただ、少し心配してただけ……」
「うん。ごめんね。でも、もう大丈夫だから……。そうだ! みんなでエクレア食べようよ」
そう言うと桃香は冷蔵庫からそれを持って来ると水流と火炎に一つずつ渡した。
「ひゃっほ。エクレアちゃん。おいら大好き!」
水流がはしゃぐ。
「桃香も!」
そう言うと桃香はきらきらと笑ってエクレアを食べ始めた。そんな桃香を微笑ましそうに見つめる火炎。
しかし、その瞳はどことなく寂しそうだった。


次の日。学校に行くとまた、クラスの雰囲気がちがっていた。昨日、教室が水浸しになったこともあって、いつもとちがう教室だったこともあるが、みんなこそこそと隅に固まって話している。
「おっはよう! 何だよ、みんなしけた顔しちゃってさ」
水流が言うと誰かがさっとその前に新聞を広げた。
「おまえんち、新聞とってないのかよ?」
「新聞? あるよ。火炎がそういうの好きだからさ」
「この記事、読んでみろよ」
指さされた場所には昨日の万引き事件のことが書かれていたのだが、漢字の読めない水流には理解できない。

「これがどうしたってんだよ?」
すると、別の子が言った。
「こいつに言ったって無理だよ。だって、こいつも万引き犯の仲間なんだからさ」
「それにしたって、驚いたよな。あの泉野がグルだったなんて……」
「だから、あいつ、平気でこいつらと口利いてたんだよ」
「単にいい子ぶってるだけだと思ったけど、仲間だったからだなんてね」
子ども達の話で大分その新聞の内容が理解できた水流が怒鳴った。

「てめえら、まだ騙されてんのか? 泉野は被害者なんだぜ! むろん、おいらもだい! みんな、あの店長がやらせた陰謀だったんだ」
「そんな証拠どこにあんだよ?」
「そうだ。そうだ。証拠を見せろ!」
みんなが水流を取り囲む。
「証拠は……」
水流が詰まる。桃香が目撃したにも関わらず平然としらばっくれるような店長だ。よほどしっかりした証拠を押さえなければ認めないだろう。そして、クラスメイト達も納得しないにちがいない。

「証拠はおれだ」
教室の扉の前に立った淳が言った。
「村田……」
「やだ。どうして村田が来てるの?」
みんながあとずさる。隣には泉野もいた。それを見て子ども達は、やっぱり仲間だったんだとささやき合う。しかし、淳はそれを無視してずかずかと教室に入って来ると言った。

「こいつは無実だ。それに、水流も……。何故なら、水流のズボンのポケットに店の品を入れたのはこのおれだからさ」
一瞬の静寂。それからすぐに教室の中は騒がしくなった。
「やっぱりそうなんだ」
「村田の奴、やっぱ最低じゃないか」
「でも、それだと谷川君は無実ってこと?」

「あったりめえだい! おいら万引きなんてやってねえんだからな!」
水流が叫ぶ。
「それじゃ、泉野の件はどうなんだ? それもおまえがやったって言うのか?」
「いや。それはおれじゃない」
淳が言った。
「それじゃ誰なんだよ?」
「あの店長だ」
淳が言った。

「バカな……」
「店長が自分の店の品を万引きさせてどうすんだよ?」
「だから、濡れ衣を着せたかったんだ。おれがやったのと同じだよ。あいつは、泉野の家の土地が欲しかったんだ。それで、その息子である渡に罪を着せて、スキャンダルにしたかったんだ」
「でも、証拠は?」
「こいつのポケットにガムを入れるところを見た女の子がいるんだ。けど、店長は子どもの言うことなんか信じられないと言って、無理に新聞に記事を書かせたんだ」
「本当か?」
「もし、それがほんとなら許せないわ」
「そうだよ。大人のくせに汚い真似しやがって……」

「ほんとなの? 泉野君」
佐々木が訊いた。
「うん。その通りだよ。ぼく達ははめられたんだ」
「そんな……」
「許せない」
「みんなで抗議しようぜ!」
「そうだ。そうだ。抗議しに行こう!」
皆が興奮し、拳を振り上げて叫んだ。

「どこへ行くって?」
烏場先生が入って来た。誰かが先生の前に新聞を突き出した。
「それじゃあ、みんなは泉野や谷川が万引きをしたんじゃないって認めるんだね?」
先生が念を押す。
「はい。だって村田君がほんとのこと言ってくれたから……」
「あの店長、はじめっから感じ悪かったんだよな」
「大人の都合で万引きの罪を着せられるなんて、泉野君がかわいそうです」
「だから、おれ達、これから抗議に行こうとしてたんだ」
みんなが口ぐちに言う。

「そうか。先生はうれしいよ。そうやって友達のことを信じようとするみんなの気持ち。そして、その友達を救おうとしていること……。だが、それは大人がする仕事だ。だから、今は勉強をしないとね」
「えーっ? 何だよ、それ」
「ひどいよ、先生」
一斉にブーイングが広がる。
しかし、烏場は冷静に言った。
「今はしっかり勉強して、大人になった時、間違ったりしないように、正しい心を身につけるんだ。本当は何が正しくて、大切なことなのか。自分自身の目で見極めて、判断ができるようにね」
烏場は教室のみんなをぐるりと見回して言った。

「そうか。あの店長は子どもの時、きちんと勉強しなかったからあんなひどい大人になっちまったんだな」
水流の言葉にみんなが笑った。
「そうだよ、きっと」
「自分だけが正しいなんて思いこんで、お金がすべてという価値観を持ってしまったから、周りのことが何も見えなくなってしまったんだ」
泉野も言った。
「きっとあの店長はかわいそうな人なんだと思います」
女の子達も言った。
「それじゃあ、そんな哀れな大人にならないためにも、国語の勉強を始めようか」
先生の言葉に皆自分の席に戻った。

「谷川、ごめんよ。おれ……」
通りすがりに淳が詫びた。
「ああ、わかってる。だから、気にすんなよ」
「おれ、おまえと友達になりたいんだ」
「おいらもだよ。人間の友達は多いほどいいもんな」
「人間?」
「ああ。おいら達、みんな人間だろ?」
「そうだけど……。やっぱおまえって変わってるな」
「そうか?」

「桃香も妙なこと言ってたけどな。さすがは兄妹っていうか」
「桃ちゃんが……?」
「でも、いいよ。許してくれてありがとう」
そう言うと、彼はさっさと自分の席に着いた。


午後の授業は水泳だった。
「ひゃっほう! これぞまさしくおいらの出番!」
真新しい水泳パンツを身に着けて、水流がはりきった。
「それじゃ、25メートル。自信のある者からチャレンジしてみよう」
烏場が言うと、何人かが手を上げて飛び込み台に立った。そして、先生の笛を合図に一斉にプールへ飛びこむ。太陽の光がしぶきに当たってきらきらと反射した。

「すっげえ! 谷川ってめちゃはえー!」
「まるで水の中に溶けてるみたい……」
皆が驚く。
みんなはまだ体二つ分はうしろだというのに、もう水流は水面に頭を出した。そして、そのまま水をかいて進むとゴールの壁にタッチした。
「すごい!」
「あまりに早くて姿が見えないほどだったよ」
「今年の水泳大会は、うちのクラスが優勝間違いなしだな」
皆から褒められて、水流はうれしそうだ。

「へへへ。言ったろう? おいら泳ぎならだれにも負けないってさ」
「ほんとだね。すごいや」
泉野が言った。
「ほんと。見直したよ」
淳も笑う。こうして見ると、村田はごく普通の小学生だ。どこにも悪びれた様子はない。
(やっぱり、これもみんな、あの店長と砂地のせいだったんだ)
水流はいよいよもって確信を抱いた。
(ようし。見てろよ。あいつらに一泡吹かせてやる)
決意も新たに振り向くと、女の子達が顔を赤くして俯いている。

「あそこに……」
その中の一人が顔を背けたまま水面を指さす。
「え?」
見るとプールの真ん中にプカプカ浮かんでいる物があった。
「あちゃ! おいらの水泳パンツがあんなとこに……」
あまりに早く泳いだせいでというより、水に溶けたせいでパンツが抜け落ちたのだ。水流はズボッと水中に潜ると水に溶け、大急ぎでパンツを回収した。
「へへ。わりぃ。ちょっとサイズがでかかったみたい……」
水流が照れ笑いすると、クラスメイト達もどっと笑った。


そして、6時間目の授業が終わり、帰りのあいさつも済ますと、みんなはこっそり校庭の隅に集まった。あの卑怯者の店長をどうするか子ども達だけで相談しようというのだ。
「警察に訴えたら?」
有沢が意見を出した。
「だめだよ。大人はてんで信じちゃくれないんだ」
北野が言う。

「それじゃ、署名を集めたらどうかしら?」
春日が言った。
「でも、時間がかかるよ」
「やっぱり、直接乗りこんで文句を言おうぜ」
がまんできずに水流が言った。
「でも……お店には他のお客さんもいるし、大勢で行ったら迷惑かもしれないよ」
泉野が冷静に言う。

「おめえ、何言ってんだよ。渡だってはめられたんじゃないか」
淳が言った。
「そうだよ。行こうぜ! これだけ大勢で行けば、あの店長だってびびるんじゃねえかな」
水流ががんとして主張する。
「それじゃ脅しだよ」
それを泉野が制する。
「そんじゃ、どうすんだよ?」
「だから、相談してるんじゃないか」

「代表が何人かで行ってみたら?」
淳を止めて、佐々木が言った。
「そうだね。静かに話し合うならその方がいいと思う」
「話し合う? あの店長にそんなことできんのかね?」
水流が疑わしそうに鼻を鳴らした。
(何しろ、奴はあの砂地と組んでるんだからな)
「取り合えずはぼくと淳、それに水流は当事者だから、この件に関わっていない人がまず話しあってみるというのはどうだろう?」
「そうね。お互いに顔会わせたら感情的になってしまいそうだものね。いいよ。私が行く」
佐々木がきっぱりと言った。

「おまえ……」
淳がその顔を見つめる。
「いいのかよ? おまえ、おれのこときらってたんだろ? それに、スカート焦がしちゃったし……」
淳がぼそりとつぶやいた。
「そりゃ、怒ってるよ。あのスカート、わたしの一番のお気に入りだったんだから……」
彼女は淳を睨みつけて続ける。
「でも、あっちゃんだけが悪い訳じゃないんだって、わたし知ってるから……」
「あっちゃん?」
クラスのみんなが注目した。

「よせよ! 別におれ達そんな仲じゃねえからな! たまたま幼稚園の時、隣に住んでて、それで……」
淳が言い訳する。
「そうそう。たまたま近所で淳と渡、それに私が同じ幼稚園だったから仲良くしてたってだけ……」
佐々木が微かに顔を赤らめて言い訳する。
「それに、うちの親が学校に怒鳴り込んじゃって、ことをよけいにオーバーにしちゃったの。だから、今度はわたしがきちんと話をつけたいの」
「わかったよ、佐々木さん。ありがとう」
泉野がその手を取って握手した。
「それじゃ、淳とも仲直りしてくれるんだね?」
泉野の言葉に彼女がうなずく。みんなからいっせいに拍手が起こった。
「よかったな、淳」
水流もその背中をばんっと叩いて喜んだ。


そして、店へはその佐々木と石田、それに山本の三人が行くことになった。そして、少し離れたところから客の振りをして様子をうかがう者が三人。入り口の近くに二人、あとのみんなは、取り合えず公園で待機することになった。

「それにしても、ほんとにだいじょうぶなのか?」
淳が言った。
「佐々木さんは自分の意見をきちんと言える人だし、石田さんはボイスレコーダーを持ってるんだ。いざという時の証拠になるよ」
泉野の言葉にみんなは納得した。
「だから、今は待とう」
しかし、どうしても待てない奴がそこにいた。
(おいらは信じねえぞ。あの悪徳店長め! それに、この件にはあの砂地がバックに付いてるんだ。一筋縄で行くはずがねえ。このおいらが行って、ぎゃふんと言わせてやるぜ!)
水流はそっと子ども達の輪から離れると水となってコンビニへ向かった。